Enter The Void

1991, Tokyo. A trader from the country side. Book

不二子もハニーも真っ蒼

「不二子もハニーも真っ蒼~♪噂で変わったと聞いてはいたけど~♪」

 

で始まるイジワルな曲が好きだった。

聞いていると何故か不思議と好きな子の顔が浮かんだものだった。

 

「不二子もハニーも真っ蒼」のその一言だけで、詞の中の「彼女」のがダイナミックな姿が一発でイメージできる。キリンジの皮肉屋な天才っぷりを感じてしまう。「メスとコスメ」は、全身を改造して美しいサイボーグになって現れた元カノに他人事の様に「その昔よりもすっごくきれいだぜ」「ああなればいい 君はなればいい 君のなりたい”本当”になればいい」と告げる。残酷な曲だ。キリンジは絶妙に捻くれてる。腹の底から捻くれていて、毒蛇みたいな歌詞だ。なのに洒落てて、いっつも三島由紀夫もひれ伏しちゃうレヴェルで一文にすべてが詰まっていて、上手いんだ。

 

… なんでこの曲を聞くとあの子の顔が浮かぶんだろう、と部活へ向かう前の学食でぼんやりしていた気がするけれど、ある日その子と二人で出かけた時に「誰にも言ってないんだけど実は変えたの」とそっと教えてくれたんだっけ。

 

 

「変じゃないよね?わからないよね?」

 

 

私の世界で一番可愛い大好きな女の子、君が変なわけがない!と思いながらチキンカツをゆっくり食べていた。思えばうら若き乙女たちが話し込む為にわざわざとんかつ屋を選ぶなんて、意味不明で笑える。スタバじゃねーのかよ。彼女は所謂芸人的なポジションで男女から愛されてからかわれていたけれど、私には背の高い王子様のような、猫背でナイーブなお姫様だった。(内心。「今度あの子をブスって言ったらお前を殺すからな。」)故障したかたわもの同士、優しく分かり合っていたね。

 

こうして若い日のことを振り返ってみると、面白くてウィットの効いている女性のことを、頼もしく「セクシーな人だ」と感じるのは昔からのことらしい。昨年私が惹かれた女の子もまた、1分おきに面白かったものだ。そうだ、背中が丸い人を見ると何故かぎゅっとしたくなるのも、昔から…。いわゆる「好みのタイプ」ができないな~思っていたけど、面白い女性のことがとても大好きなのは間違いない気がする。私の中にある頑固な石の様な硬さが、磁石の様に彼女たちに惹きつけられて、ふにゃふにゃに緩んでしまったせいなのかも知れない。

 

「メスとコスメ」の女の子との思い出のレイクタウンのとんかつやも、時代の波にかき消されて今じゃ良く分からないお店に成り代わっているだろう。

 

 

 

…導入です。

 

 

私の職場の近くにアホで無駄にエリートでクソッたれな外国人共のはきだめがある。週に5回、ないし7回。家族も仕事も忘れて「よろちくび」と言いながらジンを飲む。彼らが知り合うのはジェット機よりも早い。どんなnationality, colorであろうと、Hiの後は流ちょうだ。(ただし、日本人を除いて…。)最近はコロナの影響で、プロレス技の様に肘でお互いを小突き合う様に握手を交わしている。しょうもない、永遠のいたずら少年たち。私もまたその一人だろう。

 

それでも彼らは、私の目にはとてもスマートに映る。日英両語を上手くかけた親父ギャグを披露しあって、ヌードの写真を見ながら「I wanna fuck her」と叫びだし、その次の瞬間政治の話をする。上手い。途轍もなく議論が上手い。そんなフラットさが、肩の力を抜いて生きる術を知っている賢さが、たまらなく格好よく見える。彼等の煙の匂いを隣でかぎながら、「あ、ロック座の匂い!」と思っていた。 ストリップの匂いは煙草の匂い。彼らは、私が実は彼らの百倍おっぱい星人であることを、知らない。