Enter The Void

最近はジャズとちひろさんに夢中です。

Exodus

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4泊5日の東北旅行から帰って相変わらず竹槍で戦車を倒すような日常へ戻り、砂を嚙むような気持で自宅に閉じ込められている。旅先でなんちゃって一眼レフで撮った沢山の写真を引っ張り出して整理する気力もわかないので、ひたすら石牟礼道子さんの言葉に触れて時たまノートに写経してみる日々。八戸の海やせんべい汁が恋しいよ~。

 

彼女のいうところの「文字をもって考えぬ世界」である在りし日の水俣の自然や信仰の美しさと、彼女が海辺の村の主婦として長いこと文字を取り上げられて過ごしていた果て、三十六歳も過ぎて活字と出会い、水俣チッソに侵された後に遺した驚異的な仕事を見ていると驚嘆しかわいてこない。中学校もまともに出れただろうか、といった境遇にありながら才能を余すことなく使い切って水俣を描きだした。神が不幸を背負わされた土地を救うためにつかわした使徒でしょうか。本気で信じて疑わないわたくしである。

 

世の中には恐るべし資質をもって生まれて、それを運命的に開花させる方がいらっしゃるものなんですね。彼女が文字と出会うきっかけになった先駆者である高群逸枝さんもかな~り奇特な方だったよう。才人に向かって失敬ですが、彼女たちが訴えている世と己との隔たりとその苦しみを読んでいると、古来からスタンダードレールからはみ出しまくって首を絞められてもがいてた女はいたんだとついつい慰められちゃうよ。ヴァージニア・ウルフといっしょだね。いや~いっくら読んでも次の旅ががでてくる。そうしてさんじゅうになりました。

 

言葉を天から授かり、人生との摩擦の中で這って磨いて表現してくれた人々がいなければ、後世を生きる私たちだって相も変わらず同じ蟻地獄をぐるぐるぐるぐるさせられていたことでしょう。孤独な者たちを支えて寄り添うのは、いつだって文化や先人達のぎらっと光る意志とインテリジェンスなんだと思う。日本では蹂躙されて虫の息になりつつある光…。こういう政治のなかでは、人々の教育が低く英語などできないままでいてもらった方が都合がいいということがよくよく分かりますね。

 

 

肖像権について疎いので、Google 検索でひっかかる瞬間の写真をそのまま載せてみる。

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この世にはまた、魂が自分の生身にしっくり添わぬ人間もいるのです。魂の方も生身の方も、往く先々でいろいろやり損なうそのしるしに、水子のような言葉が、なんと無数に流れてゆくことでしょう。けれどもまた、そのできそこないが、他の人生のそれと絡まって、思わず互いに毒素のようなものを吐き合ったりするのを観れば、生まれそこないの言霊たちにも、生身の恨みがこもっているのかもしれません。 

 

この世とあの世の境には、往きつ戻りつして今日は生きそびれ、明日は死にそびれて、どちらの方へも往きつけぬ世界がもうひとつあって、そこにあるものたちの位相を、迷う、とか狂う、とかいうのだろう。

 

※彼女の祖母は盲目で、神経をおかしくしてしまっていて、「神経殿」と村人たちから呼ばれていたらしい。水俣の人々はアウトサイダー的な人々を神にみたてて優しく共存していたんだって。

 

すごい。

 

 

余談はさておき、私明日出社なんですよ…って、書きながらここを更新するとき毎回「明日出社なんですよ…」「本当にめんどうくさいんですよ…」みたいなこと言ってないか。いやでもね、今回は心の底から出社が怖いっす。東京の感染状況はただならぬ気配がする。これまでも数字としてでてくる数よりも潜在的な患者は当然多いとは思っていたのだけど、今回の風向きは今までと全然違うよね。へらへら旅して飲んで本屋と銭湯放浪しているぐらいだったけど、今度ばかりは怖いYO...路上飲みが騒がれてますけれど、ここ一か月で加速度的に地獄図になっている気がする。日本が無秩序化している感じがして怖い。毎日海外メディアに汚点がばれて批判されてるしね。

 

ご本人が努力を重ねたことはだいぜんていとして、それでも、ここから現代の出エジプト(Exodus)できるごく一部の人々は幸福かも知れません。まる。ねる。