Enter The Void

最近はジャズとちひろさんに夢中です。

真夜中の悪夢のドライブ

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学生時代、空手の師範が厚意で部員たちに「夜警」という名目でアルバイトをさせてお小遣いをあげていた。なんでも立派な神社の片隅にある一室で「寝ないで勉強でもしていなさい!」というだけの、カンタンなお仕事である。いくら立派な神社でも必要不可な役どころとは思えないし、それこそ警報サービスを導入するなりプロを雇うなり色々なやり方ができたことを思えば、あれは師範なりの学生応援事業だったのだと思う。

 

どんなことでも人の役に立つ仕組みを考えて提供できるだけの資本がある人達ってマジで凄いなと思う。今私がいる外資のmoney moneyの世界が時折虚しくなるよなあ。良いことしてる人たちを見るとね。もうこいつらのポンコツマシーン売って金を稼ぐことなんてどーーーーでも良いわ飼い猫幸せにしてあげる方が全然尊いわって思っちゃうもんなーーーーーーー。(危機)

 

日本人は良くも悪くも全てに精神が宿っちゃってて、「合理的なつもりでそれ、実は義理人情道徳の話ですね…ガイジンにそれは理解できませんね…」みたいなことがよくある。(笑) この間に入って満足してもらうの本当に大変。しょーじき今でも何年輸入品買っててそんなこと言ってんですかいい加減世界と調律を合わせてください!!!って呆れちゃうことがある。その反面、欧米風の合理主義の仕事って精神性がなくって正義も倫理も思いもないことが多いから、日本人からすると虚しいんだろうな~。何年やっても引き裂かれるね。会社の先輩が「日本人は無宗教の筈なのに最も宗教っぽい。おてんとうさまが見てると思う人たち。」ってシミジミ言ってたの思い出すよ。

 

そしてseriousに円安が心配な最近。外貨預金しないと積むかもと思ってずるずるしてるうちにとても外貨買えない世界線になっていた…。USD/126って、え?ちょっと待って、それEUROではなく?????通貨間違えてる????だよ。皆様に生意気にも言いたい。お互いいつか外貨買っておきましょう…。日本が弱るほど通貨も弱くなるでしょうからね。韓国・マレーシア・中国とか良いんじゃねーかな。

 

あれ、気づいたら導入に千文字くらいかけてる…導入が本題みたいになってる…私が今日書きたかったのは夜警をやってた時からモンスターを何本飲もうと眠いものは眠い何をしても眠い何をしても自分は絶対に眠気は飛ばせないということを知っているのにも関わらずNightmare Alleyが見た過ぎて車で一時間以上かかる映画館でレイトショーを観てしまったサイコーだったという話だった。

 

昔からエドワード・ホッパーのアンニュイな絵画の世界みたいな、それこそ遅くに映画を観た後にドライブして道中のくすんだbarやdrive inでハンバーガー齧ってモーテルに泊まる…みたいなことに凄い憧れていたんだよね。しかし現実は悲惨でマックが時短の今 日本の田舎の路上には精々牛丼屋とラーメンしかないことが分かって泣きましたが、肝心のナイトメア・アリー自体は人生で一番面白かったかもというほどショッキングな映画でした…。

 

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Outlineとしてはワケアリの、過去を燃やして逃げてきたような青年が南西部の奇怪なサーカス(見世物小屋)に辿り着いて、偶然獣人のショーを観るんだよね。Is he man, or beast?果たして彼は本当に獣人なのか、人間なのか?と場を煽り、ボロボロの獣の様な人間ににわとりを与えて観客の前で首を食いちぎらせる。そういう恐ろしい悪趣味なショーをやっている一座。青年スタンはそこで単発の仕事を斡旋されたことをきっかけに一座に入って、読心術という高度なペテンに出会う。

 

読心術は人の心が読める、死者と話せると嘘を吐いて人の最もdelicateな部分を弄んで大金を稼ぎだすペテンだけど、そうして人々に嘘を吐いてスポットライトを浴びるうちに、いつしか嘘が真実に思えてくる。やがて自分は本当に真実を言い当てられる全知全能の神だと思うようになり、最後は人の心を失ってしまう…。一座で読心術のプロだったピートも、今では酒に溺れて潰れてしまっていた。

 

ワケアリ青年のスタンはこれで遂に自分にも取り柄ができる、過去から抜け出せる、と異常な執着心で悪魔の技を盗もうとピートに弟子入りするんだけど、その恐ろしさを知っているピートは決して伝授しようとしないんだよね。しかし、ある日スタンはピートのすべてのワザが書かれた秘密のノートを盗む為に、彼を密造酒で殺してしまう。そして人の心を弄ぶ悪魔のスキルを取得して都会でショーマンとして大成功し、どんどん悪事に手を染めていく、という話なんだけど…。

 

いや凄かった。これはどういう話?と聞かれたら困っちゃうくらい濃い話で、一人一人の人物が持っているストーリーが濃いのよ。 

 

ある日スタンのペテンを見破る心理学博士の女性(ケイト・ブランシェット)が現れたことをきっかけに、彼女のクライエントである時の権力者の個人情報を彼女から聞き出して、読心術にハメて高額を引っ張り出すという危険なことをするわけ。スタンはリッター博士との出会いから人の心を更に失って、欲望に塗れて身を滅ぼしてしまうんだよね。その姿がとても恐ろしい。

 

ナイトメアアリーの広告を観た時はルーニー・マーラケイト・ブランシェットが再び同じ画面に収まっているとかキャロルの再来???今度は結婚???とすげーテンション上がったんだけど、ケイト様大好きな私でもトラウマになるほど心理学博士のリッターが恐ろしい、歪な人間だった。あのハスキーでエレガントな発音(ちょっとブリティッシュっぽく古風に聞こえる)と立ち振る舞いをみていると幸せですけどそれも吹き飛ぶレベル…。

 

人の心を弄ぶ者同士、自分も相手も二重三重に騙さないと生きていけない者同士…ということで彼女はスタンに惹かれたんだろうな。そういう彼女の揺れとか弱さを読んだスタンがリッターを利用しようと男として誘惑するのも本当にぞっとするし、読心術のペテン師と心理分析のペテン師同士の騙し合いと本音が入り混じったコミュニケーションとか演技とかマジで凄かったよ。

 

兎に角ぞっとするようなsickな人々が他にもわんさかでてきて、スリリングです。私が一番怖かったのはスタンが破滅する一番のきっかけになった妻子を失くした大富豪のサイコだな…。もう人間が生理的に受け入れられないsickさのオンパレードって感じなの。

恐らく過去に自分で妻子を殺しておいて、妻子を失ったことに病んでいるつもりで妻子の幽霊に会いたがってスタンに大金をはたいているというだいぶやばい男。

人を躊躇いなく殺しても許されるだけの権力者という設定が爆弾をハラハラみているような気にさせられて、彼の恐ろしさに拍車をかけていた。所謂「石油王と同じエレベーターに乗るな」だよね。

 

最後の最後で「そのせいで若い女性を次々に傷つけていた」と彼がついに告白したときにスタンが思わず後ろに飛びのきそうになるくらい怖いものを見る目になるんだけど、あれ観客の気持ち…。死ぬほど罪悪感にはさいなまれているくせに、自分が犯した罪を心から受け入れないでただ病んでいるのが気持ち悪い通り越して恐ろしい。スタンが彼を殴り殺したときスカッとしました正直。。。

 

登場人物のSickさ、ノワールからして若い子にはショックが強すぎて落ち込んでしまうと思うのであまり観て欲しくないのですが、25歳以上の方には絶対観て欲しい~~!!!

 

…と、金曜日は怖い映画を観た後に台風ムードの中運転して帰った。

家に帰ったのは一時過ぎだったけれど、新鮮な体験だったな。